キャンプブームの中で、もっとも人気を集めるキャンプギアの1つである焚火台。
コンパクトな焚火台。燃焼の効率を求めた焚火台。長く使い続けられる焚火台。
一言に焚火台と言っても、今は様々な特徴を持った焚火台が市場に出ています。
どれを選んでいいのかわからない。自分たちに合った焚火台がわからない。そのようなお声を多く伺いますので、今回は、この人気のジャンルである「焚き火台」を素材の観点にフォーカスして、製造現場の目線から解説していきたいと思います。
この記事では、一般消費者の目線ではなく、あえて「製造業の目線」から、この世の中に出回っているキャンプギアの特徴や差別化しているポイント。メリットやデメリットについて解説させて頂きます。皆様のキャンプギア探しにお役に立つことができれば幸いです。
金属製焚火台の問題点
まず、素材について触れる前に、主に金属製で出来上がる焚火台の問題点について抑えておきたいと思います。
焚火台は、直火に触れるキャンプギアです。金属製品は、直火に触れさせた場合に以下の問題を引き起こす事が多くあります。
- 熱変形(ひずみ)が現れる
- ススがついたりや錆びが出るなど見かけが悪くなる
様々な製品が、この問題を素材や形状でどの様に解決しているかが、製品の特長の差異となりますので、覚えておきましょう。
焚火台の主な素材
製品として販売されている金属製焚火台の材質は主に
- ステンレス
- 鉄
- チタン
主な素材は上記の3種類です。
共通して言えるのは、やはり全てが金属である事です。
金属を直火に触れさせると、熱変形とススや錆びの問題を引き起こすとお伝えしましたが、それを差し引いてなお、金属素材が採用されるという事からもそのデメリットよりも、金属素材であることのメリットが優先されるという事がわかります。それぞれの材質、製品特徴を記載してゆきましょう。
ステンレス焚火台
【長所】
- メンテナスがしやすい
- コンパクトである
【短所】
- 変形しやすい
ステンレス素材は、丈夫で錆びにくい特徴があります。また熱変形が鉄より現れにくいので、キャンプ用品以外でも火が当たるものはステンレスを使用する事が比較的多いです。
ただし変形しないわけではないので、マグカップ等の一般製品(直火禁止のもの)を直火にかけても問題が無いわけではありませんので、ご注意ください。
表面がさびにくいので煤がついても掃除がしやすく、生地や塗装被膜がなくても銀色に輝いているので、磨くことで綺麗になります。

また、鉄と比較して丈夫(しなやかで硬い)なため、材料を薄くすることが可能となり、コンパクトに折りたためる製品を作ることができます。また材料を薄くすることにより、内部に熱をこもらせない利点もあります。

ステンレスは、素材自体の重量が重いため、大型の製品を作ると取り扱いが大変になります。そのため板や細い線材の組み合わせで形状が作られる場合が多くみられます。ただし、これは欠点ともなり、結果的に運搬時の衝撃などによる曲がりなどが起こりやすくデリケートな扱いが必要となります。
結果として、運搬が容易で扱いやすいコンパクトな製品が多く、無骨なイメージを求める方には物足りない印象を与えるかもしれません。
鉄製焚火台
【長所】
- 比較的安価
- 壊れにくい
【短所】
- 大型で重い
鉄素材は錆びやすいので、直火が当たる部分は酸化被膜(黒皮)あるいは耐熱塗料処理をしています。
鉄素材はステンレスより軽いのですが、熱による変形が起こりやすい特徴があります。そのため、あえて材料を大きくしたり、熱を受ける面を広くとる事で熱を逃したり、鉄ならではの加工のしやすさを生かして熱を逃がしています。例をあげてみます。
例1)おわん状にして、熱による変形を防ぐ。

例2)随所に穴をあけることで、蓄熱を防ぐことと空気の取り込みの2機能を持たせる

例3)側面を折り返してテーブル状にすることで、焚火台面の変形を防止する。

熱変形を防ぐために、ある程度の質量、面積が必要なため大型になりがちです。しかし、比較的大きいことは、以下の利点を生み出します。
- 手荒に扱っても壊れない
- 大人数での使用に最適
また変形しても使用ができる様に、折りたたみ式よりも可動部分が少なく、メンテナンスを怠っても使用に問題はない組み立て式構造が多くみられます。
欠点としては、錆びやすいことです。酸化被膜や塗装は使用中のキズなどで剝がれてゆきます。そのため時間経過とともにサビやススの残りなどが現れます。ステンレスと違い、磨くだけでなく、油分によるコートや耐熱塗装といったメンテナンスが必要です。

もちろん、使用感のある無骨なイメージを求める方にはそのままでも使用に問題はありませんが、スマートなイメージを求める方には難しい選択となるでしょう。
チタン製焚火台
【長所】
- 軽い
【短所】
- 高価である
- 修理が難しい
チタン素材の焚火台も、手の届く価格になってきました。
チタン素材の最大の利点は、軽くて丈夫なことです。また熱が伝わりにくいので、熱変形し難く、使用するにつれて独特の焼き色が美しく現れる特徴があります。

欠点としては価格の高さです。チタンは素材自体が高価でもありますが、硬い素材であるため、加工がとても難しく加工価格も高くなります。そのため形状としては、ステンレスの様なコンパクトサイズながら、鉄素材の様な可動部部分の少ない組み立て式の構造をしています。
また破損した場合の修理は大変難しく。メンテナンスのために磨くことも素材が硬いため現実的ではありません。
ソロキャンプや荷物をなるべく少なくしたい方には最適な選択ですが、価格と機能性を考慮し、ステンレス製との比較検討になるでしょう。
番外編)ロストル(ゴトクについて)
焚火台だけでなく、上部にナベなどを置く際に使用するロストル(ゴトク)についても同様の事が言えます。
主な素材としては以下の2種類です。
- ステンレス製
→ススのメンテナンスが簡単で、コンパクト形状が多い - 鉄製
→メンテナスが必要だが大型形状が多い
もちろんステンレス製の大型製品、鉄製の小型製品もありますので、ご予算とキャンプスタイルに応じて選択してください。

注意点は、鉄製の場合には塗装やコーティングがされている場合があり、不用意に食品素材を乗せてはいけません。ロストルに直接素材を乗せる場合は、きちんと説明書に従い、網などを乗せるか、ステンレス製を選択してください。
まとめ
金属製品は各素材によって特徴が少しずつ違ってきます。記述の通り、各素材の性質や特徴を理解して、自分のキャンプスタイルに合ったものを選択する事をお勧めいたします。各製品とも、必ず設計段階でのコンセプトがありますのでそれを理解した上でギアを選択するのも面白いのではないでしょうか。
